コラム

2025.02.03

短縮歯列について

はじめに

みなさんは「短縮歯列」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。年齢を重ねたり、さまざまな理由で奥歯を失ってしまったりすると、歯が一部欠損した状態のまま生活を送ることがあります。必要以上に大がかりな補綴(義歯やブリッジ・インプラントなど)を行わなくても、前歯から小臼歯までの歯列を維持できれば、咀嚼(そしゃく)機能や生活の質(QOL)を保てる、という考え方が「短縮歯列」の概念です。今回は、この短縮歯列がどのようなものか、どんな利点・注意点があるのかを解説します。

短縮歯列とは

「短縮歯列(Shortened Dental Arch)」とは、奥歯(大臼歯)が欠損している状態であっても、前歯から小臼歯までの歯列が残っていれば、生活上それほど大きな問題は生じにくいという考え方に基づくものです。お口の中の状態や年齢、噛み合わせの力などによって個人差はありますが、残っている歯を無理のない範囲で生かすという意味合いも込められています。

通常、成人の永久歯は親知らず(智歯)を除いて、上下左右で28本あります。
(ただし、先天的に歯が少ないケースもあります)

「8020(ハチ・マル・二イ・マル)運動」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
8020運動とは、「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という運動です。

上に示した短縮歯列の図では、上下左右の第2小臼歯までが残っていることを示しています。
本数でいえば計20本です。8020運動は短縮歯列を推奨している訳ではありませんのでご注意ください。

なぜ短縮歯列で生活できるのか

咀嚼に必要な本数を確保できる 前歯と小臼歯だけでも、噛む機能の多くを賄える場合があります。
ケアがしやすい 奥歯が欠損している場合、歯磨きが行き届きやすく、残存歯(残っている歯)のむし歯や歯周病リスクを低下させられる可能性があります。
大がかりな補綴を避けられる 大臼歯部まで人工歯を入れる必要がない場合、複雑な入れ歯やインプラント治療を最小限に抑えられるケースもあります。

短縮歯列のメリットとデメリット

メリット
維持管理がしやすい 大臼歯にまで義歯を作る負担が減ることで、お手入れがより簡単になる場合があります。
費用負担を軽減できる場合がある 大がかりな補綴処置が不要になれば、治療コストや通院回数を削減できます。
デメリット・注意点
咀嚼能力の限界 個人差はありますが、大臼歯がない分、固いものを十分に噛み砕く力が低下する可能性があります。
噛み合わせの変化 大臼歯が欠損していることで、かみ合わせが変わりやすく、顎関節に影響が出ることもあります。定期的な検診が必要です。
残存歯の負担増 残された前歯や小臼歯に負担がかかりやすくなる場合もあるため、歯周病管理やかぶせ物のメンテナンスが重要になります。

短縮歯列への対処や考え方

専門家との相談

短縮歯列を選択するかどうかは、歯科医師としっかり話し合うことが大切です。年齢、全身状態、噛み合わせの状態などを総合的に判断したうえで最適な治療法を決定します。

部分入れ歯やブリッジの検討

「大臼歯までカバーしない」部分入れ歯を作成する、あるいは必要最低限のブリッジで補うといった選択肢があります。口腔内の状況に応じて最も合った方法を選びましょう。

定期的なメンテナンス

短縮歯列を維持する上で大切なのは、残存歯の健康管理です。むし歯や歯周病にかからないように、定期検診やクリーニングを欠かさず受けることが重要となります。

噛み合わせや生活習慣の見直し

短縮歯列のままで快適に過ごすには、硬い食品ばかりを好まないようにするなど、食習慣を含めた生活スタイルの見直しがポイントになります。

まとめ

短縮歯列は、全ての歯を必ず補わなくても、前歯から小臼歯が残っていればある程度は正常な咀嚼機能を維持しながら生活が送れるという考え方です。ただし、個人差も大きいため、残存歯の状態や健康状態、日々の生活スタイルを考慮したうえで選択する必要があります。治療法を検討する際は、ぜひ歯科医院で専門家に相談してみてください。
短縮歯列が正解なのではなく、考え方の一つに過ぎないということはご理解をいただきたいと思います。
「短縮歯列だなんてとんでもない。失った歯はすべて補うべきだ」という考えをお持ちの歯科医師も多くいらっしゃいます。

京都市中京区 愛歯科医院 院長 金明善

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