みなさんは「歯を失ったら、すぐに入れ歯やブリッジ、インプラントで補わなければならない」というイメージをお持ちかもしれません。しかし実際には、「絶対に補わないといけない」という決まりがあるわけではありません。今回は、歯を失った際の考え方や、どうして補う必要がある場合とそうでない場合があるのかを、わかりやすくお話しします。
歯の欠損は「疾患」ではなく「機能障害」
むし歯や歯周病は、細菌感染や炎症によって起こる立派な「疾患」です。一方で、歯が抜けてしまった状態そのものは「病気」というよりは、噛むことや外観といった歯の機能が十分に発揮できない「機能障害」としてとらえられます。
むし歯・歯周病 | 疾患(感染や炎症を伴う病気) |
---|---|
歯の欠損 | 機能障害(噛みにくい、見た目が気になるなど) |
歯を失った状態をどうするかは、「症状」があるかどうか、つまり機能に問題が出ているかがポイントになってきます。
失った歯を必ず補わないといけないの?
歯が一本抜けただけでも、噛み合わせや見た目に大きく影響が出る方もいれば、ほとんど不都合を感じない方もいます。
「噛みづらい」「笑ったときに気になる」などの機能障害を実感している場合
→ 入れ歯やブリッジ、インプラントなどで歯を補い、機能を回復するリハビリテーションが必要かもしれません。
特に問題を感じない場合
→ 「Do Nothing(何もしない)」という選択肢も考えられます。抜けたままにしておいても、日常生活に大きな支障が出ない人もいらっしゃいます。
たとえば、近視は病気ではなく視力の機能障害であり、必要に応じて眼鏡やコンタクトレンズで視力を補正するかどうかを決めるように、歯を補うかどうかも「自分がどれだけ機能障害を感じているか」に合わせて考えてみるとよいでしょう。
リハビリテーションという考え方
歯を失った際の対処は、リハビリテーション、つまり「機能を元に近い形に回復する」こととみることができます。
入れ歯
→ 大規模な欠損から部分的な欠損まで対応でき、取り外しが可能
ブリッジ
→ 両隣の歯を支えにして欠損部をつなぐ方法
インプラント
→ あごの骨に人工の根を埋め込み、その上に歯を装着する方法
どの方法にもメリット・デメリットがあります。噛む力やお手入れのしやすさ、費用や治療期間などを総合的に考えて、「自分に合ったリハビリテーションはどういう形か?」を探してみましょう。
Do Nothing(何もしない)という選択肢
歯を補うこと自体が「治療」だと思うと、「何もしないのはダメなことでは?」と感じられるかもしれません。しかし、「歯を失っても、特に生活に困っていない」「見た目も気にならない」と思うのであれば、そのまま様子を見ていくという選択肢もあります。
ただし、失った歯によっては、かみ合わせのバランスが変わるなどの影響が後から出てくる可能性もあります。何もしない場合でも、定期的に歯やお口の状態をチェックしておくことが安心につながります。
まとめ
歯を失ったあとにどうするかは、意外にも「自分で選ぶ」ことができます。もちろん噛みにくさや見た目の問題を感じるようなら、その機能障害を改善するリハビリテーション(入れ歯、ブリッジ、インプラントなど)を受けるのが望ましいでしょう。一方で、症状や不便を感じていないなら、「Do Nothing(何もしない)」という選択をするのも一つの方法です。
大切なのは、「自分がどの程度不便を感じているか」をまず把握すること。そして、必要だと感じれば適切な方法で補えばよいのです。歯がある、ないにかかわらず、みなさんがより快適に過ごせるよう、自分の口の中の変化に関心を持って向き合ってみてください。
京都市中京区 四条烏丸 愛歯科医院 金明善