装置が目立たないマウスピース矯正(インビザライン)
マウスピース矯正は、透明な樹脂製のマウスピース(アライナー)を使用して歯並びを整える矯正治療法です。従来からあるワイヤーやブラケットを使用する矯正装置と異なり、目立ちにくく、また着脱も可能なため、日常生活への影響を最小限に抑えながら治療を進めることができます。
マウスピース矯正では、デジタルテクノロジーを駆使して作成された一連のアライナーを、1〜2週間ごとに交換しながら徐々に歯を移動させていきます。美しい歯並びを目指しながら、快適な矯正生活を送ることができる治療法です。
マウスピース矯正にはいくつかの種類がありますが、愛歯科医院では主にアラインテクノロジー社のインビザラインを採用しています。インビザラインは世界中でのべ800万人以上の治療実績があり、矯正治療の技術が進んでいるアメリカやカナダの矯正歯科医の7割以上に支持されています。
マウスピース矯正(インビザライン)の特徴
- 審美性:透明で目立ちにくいため、社会生活を気にせず矯正治療が可能
- 着脱可能:食事や歯磨き時に取り外せるため、衛生管理が容易
- 快適性:ワイヤーやブラケットがないため、口腔内の違和感や痛みが少ない
- 治療計画の可視化:3Dシミュレーションにより、治療過程と結果を事前に確認可能
- 時間管理:治療の中盤では2〜3ヶ月に1回の通院で済むため、忙しい方にも適している
これらの特徴により、患者さんの生活スタイルに合わせた柔軟な矯正治療が可能となります。
マウスピース矯正で対応できるケースとできないケース
マウスピース矯正は多くの不正咬合に対応可能ですが、すべての症例に適用できるわけではありません。
適応できるケース
- 軽度から中等度の叢生(歯並びの乱れ)
- 空隙歯列(歯と歯の間のすき間)
- 軽度の開咬や過蓋咬合
- 歯の傾斜や回転
限界があるケース
- 重度の骨格性不正咬合
- 大きな前後的なズレ(上下の顎のずれが大きい場合)
- 顎関節症を伴う症例
- 多数の欠損歯がある場合
適応については、詳細な診察・検査の上で判断いたします。
マウスピース矯正(インビザライン)のメリット・デメリット
メリット
- 審美性に優れている
マウスピース(アライナー)は透明な樹脂で作られているため、ほとんど目立ちません - 口腔衛生管理が容易
マウスピース(アライナー)はご自身で取り外すことができるので、歯ブラシやフロスなどをしっかり使うことができます - 快適な装着感
通常、ワイヤーとブラケットの装置よりも装着感に違和感が少ないとされています - 食事制限が少ない
ワイヤーとブラケットの装置であれば、ガムを避けるなど、一定の制限がありますが、マウスピース矯正には制限がありません - 治療計画が可視化できる
3次元的にスキャンされたデータをもとに、歯並びを整えるシミュレーションをコンピュータ上で行います。設定した治療ゴール、および治療中の歯の移動をコンピュータの画面上で確認することができます
デメリット
- 1日20〜22時間の装着が必要
一日の中での装着時間がキープできるように、ご自身で管理していただく必要があります。装着時間が短いと、計画通りに歯が動きません - 複雑な症例には適さない場合がある
マウスピース矯正で対応できないケースがあります。その場合はワイヤーとブラケットの装置を使うなどの他の手段を検討する必要があります - 紛失や破損のリスクがある
マウスピース(アライナー)は取り外し可能なため、間違って紛失してしまう可能性があります。また、樹脂で作られているため、強い力がかかると割れてしまったり、熱によって変形してしまったりします - シミュレーション通りに進まないことがある
歯を動かしていく過程を事前にシミュレーションして、マウスピース(アライナー)を製作しますが、現在では生体の再現が完全にできるわけではありません。そのため、治療前のシミュレーションと実際の治療結果が一致しなくなることがあります。
マウスピース矯正(インビザライン)の流れ
STEP.1初診相談
まず初めにお話からお伺いします。いまの歯並びで気になっていることやお困りのこと、こうだったらいいなぁという理想の歯並びの状態、治療に際して不安に思っていることなど、なんでもお話しください。
初診相談では、簡単な診察を行います。また、歯並びをスキャンして、コンピュータによる簡易シミュレーションをご覧いただきます。
概略ではありますが、治療の見通しをお伝えします。
STEP.2精密検査
マウスピース矯正(アライナー矯正)に必要な各種の検査を行います。
検査内容は以下の通りです。
・一般歯科的検査
・口腔内写真撮影/顔貌写真撮影
・X線写真(レントゲン)
・口腔内スキャン
STEP.3診断・治療計画のご説明
検査の結果にもとづいて、むし歯や歯周病の治療が必要となった場合には、矯正治療に先立って行われます。
歯列矯正の診断と治療計画について、ご説明します。治療中にどのように歯が動いていくのか、ゴールはどのような状態で設定するのか、シミュレーションに基づいてコンピュータの画面上で動画としてご覧いただけます。
また、治療期間と費用をはじめ、いつ、どのような処置を行っていくのか、などを具体的に説明いたします。
矯正治療計画についてご同意がいただけるようであれば、契約・治療開始となります。
STEP.4マウスピース(アライナー)の製作
治療計画にご同意をいただけましたら、マウスピース(アライナー)の製作を開始します。
担当医の診断に基づき、アラインテクノロジー社がマウスピース(アライナー)を製作します。
完成したマウスピース(アライナー)が愛歯科医院に届けられてから治療開始となります。
STEP.5マウスピース矯正(アライナー矯正)治療の開始
製作されたマウスピース(アライナー)を使って治療を開始します。
まずはマウスピース(アライナー)がきちんと歯の形に合っているか、所定の装着ができるかどうかをチェックします。
問題がなければ、マウスピース(アライナー)の取り扱い方法など、治療に必要な管理をご説明します。
マウスピース(アライナー)の交換時期、ご来院いただくタイミングについては、患者さんごとに個人差がありますので、この点の説明も行います。
STEP.6保定・経過観察
矯正治療を終えてから後戻りを防いで歯並びをキープすることを保定といいます。保定に用いる装置を保定装置(リテーナー)と呼びます。このリテーナーもアライナーと同様の透明なマウスピースを用いることがほとんどです。
一般に、歯を動かした期間と同じ程度の保定期間をとるのがよいとされています。
治療後はアライナーと同じ程度の使用時間をキープしていただき、徐々に短くしていくのが基本です。
STEP.7メインテナンス
治療後は定期的なメインテナンスにお越しいただき、後戻りやかみ合わせの以上などのチェックを行います。
せっかく整った歯並びになったとしても、むし歯や歯周病が進行してはもったいないです。
健康と美しさを定期メインテナンスで維持していきましょう。
マウスピース矯正(インビザライン)のリスク・副作用
マウスピース矯正(インビザライン)には以下のような副作用やリスクがあります。
不快感・痛み
新しいマウスピースの装着(交換)直後は、一時的に多少の違和感や窮屈感、あるいは痛みが生じる恐れがあります。
通常は装着後2〜3日で感じることはなくなります。この時期にマウスピース(アライナー)をしっかりと装着することが歯の移動のためには大切です。
歯根吸収(歯の根が短くなる)
歯列矯正によって、歯根が短くなる「歯根吸収」が起こることがあります。
奥歯よりも前歯に多く発生する傾向があり、深刻な場合は歯のぐらつき・脱落が起こる恐れもあります。
マウスピース矯正(インビザライン)ではブラケットとワイヤーの矯正に比べて起こりにくいとはされていますが、定期的なチェックが必要です。
ブラックトライアングル
矯正治療による歯の移動に伴い、隣接する歯と歯の間に「ブラックトライアングル」と呼ばれる三角形の隙間が生じる場合があります。特に、前歯で頻繁に発生する傾向にあります。
歯と歯が重なって生えていて、その部分の骨がもともとない状態で発生しやすいとされています。
矯正後の後戻り
矯正治療を終了した後は、歯並びが後戻りする可能性があります。元の歯並びに戻ろうとする傾向のことを「矯正の後戻り」といいます。矯正治療が完了した後(動的治療期間の終了後)に、保定装置(リテーナー)をきちんと使うことが大切です。
アレルギー
マウスピースやアライナーチューイー(マウスピースを密着させるために使用する、弾力性のある)にアレルギー反応が出る可能性はゼロではないとされています。ただし、これは極めて珍しいケースです。現在までのところ、愛歯科医院でアレルギーが確認できた事例はありません。
むし歯・歯周病
マウスピースを装着している時は、歯面がマウスピースで覆われるために、唾液の働きが届かなくなってしまいます。
また、マウスピースの不適切な使用、つまりプラークがたまった状態でマウスピースを使用することは、むし歯と歯周病の発症・進行リスクを高めてしまいます。
マウスピース(インビザライン)での付加的な処置
マウスピース(インビザライン)矯正は透明な樹脂製のマウスピースを使って行われる矯正治療ですが、そのマウスピースだけでは効率的な治療ができません。マウスピースに付け加えて行われる処置があります。
アタッチメント
アタッチメントと呼ばれる突起を歯に取り付けます。これによって歯の移動の方向や角度、強さをコントロールします。
アタッチメントは歯の詰め物に使われる歯の色をした樹脂(コンポジットレジン)で作られるので、目立つことはありません。
IPR
成人では顎の大きさを歯列矯正のみで変えることができません。顎と歯の大きさのバランスをとる必要がある場合で、その量が小さいとき、歯を少し(0.1ミリ〜0.3ミリ)削ることで並ぶように整えます。
顎間ゴム
上下の顎のズレを修正しようとする時に使います。歯に取り付けたボタンとマウスピースを矯正治療用の輪ゴムでつなぐことで、マウスピースだけでは実現不可能な矯正力をかけていきます。
抜歯
基本的に親知らずは矯正治療を始める前に取り除きます。ただし、親知らずの位置が深すぎて、抜歯のリスクが高すぎる場合は経過観察となります。
IPRの項でも書いたように、成人の場合は顎の大きさを変えられないため、どうしても永久歯の抜歯が必要になることがあります。多くの場合、小臼歯を抜歯対象にします。
マウスピース矯正(インビザライン)の費用
項目 | オプション | 料金(税込) |
---|---|---|
エクスプレス | 片顎 | 211,640円 |
両顎 | 271,700円 | |
ライト | 片顎 | 211,640円 |
両顎 | 337,480円 | |
モデレート | 片顎 | 408,980円 |
両顎 | 543,400円 | |
コンプリ | – | 770,000円 |
※調整管理料:8,800~12,100円
※マウスピースの材料は厚生労働省の認可が通っていますが、インビザラインは完成物薬機法の対象とはならない矯正歯科装置です。そのため、医薬品副作用被害救済制度の対象とならない場合がありますのでご了承ください
マウスピース矯正(インビザライン)の治療例
マウスピース矯正(インビザライン)のよくあるご質問
マウスピース矯正(インビザライン)にかかる治療期間はどれくらいですか?
歯を移動させる量が少ない場合、治療期間は数ヶ月で終了することもあります。治療が複雑な場合は時間がかかり、治療期間が2年以上になることもあります。一般的には治療期間は1年から2年程度になりますが、それ以上に治療期間が必要になることもあります。治療期間は治療方針や治療計画によって変動があります。
マウスピース矯正(インビザライン)は痛みがありますか?
歯を動かすことで、患者さんによっては違和感や痛みが生じる場合があります。
マウスピース(アライナー)を交換した際、当初の2、3日に生じます。
前歯だけのマウスピース矯正(インビザライン)はできますか?
かみ合わせや奥歯の歯並びなど、条件に当てはまれば、例えば上の前歯だけなどといった部分矯正も可能です。
治療後に、また歯並びが元に戻ることはありますか?
「矯正治療後、噛み合わせの調整や保定を十分にできていなかった場合、移動した歯が元の場所に戻る「後戻り」という状態が起きる可能性があります。保定装置(リテーナー)をきちんと使う、定期メンテナンスを受けるなど、治療後のアフターケアも重要です。
京都市中京区 愛歯科医院 院長 金明善