根管治療とは、歯の中にある「根管」と呼ばれる管状の部分に対する治療です。「根管」には本来、血管や神経線維が含まれる「歯髄」という組織で満たされています。
むし歯やその他の原因によって、根管に細菌感染が起こってしまうと、痛くなったり腫れたりすることがあります。そのような場合、感染した歯髄組織を取り除き、きれいにしてから代わりのお薬を詰める必要が生じます。このような治療を根管治療といいます。歯内療法ともいい、英語ではEndodonticsとなります。一般的には、「神経の治療」と呼ばれることが多いので、耳にされたかたも多くいらっしゃることでしょう。
根管治療は歯科治療の中でも難易度が高く、成功率がそれほど高くない治療とされています。ある調査(*1)によると、日本では半数以上が経過不良であったとされています。この調査は日本での根管治療の成績を調査したものですので、保険診療での成績を調査したものと考えられます。保険診療での根管治療は半数以上が経過不良となる、と言い換えることができるでしょう
(*1):須田 英明, わが国における歯内療法の現状と課題, 日本歯内療法学会雑誌, 2011, 32 巻, 1 号, p. 1-10
一方、世界的には根管治療の成功率は80%や90%であったと報告されています。
愛歯科医院ではこの差を埋めるべく、世界基準(グローバルスタンダード)な根管治療を、精密根管治療と題してご提供します。
愛歯科医院の精密根管治療について
歯科治療には「魔法のような治療」、「夢の治療法」といった治療は存在しません。
世界基準(グローバルスタンダード)とされていることを、愚直に、誠実に、続けていくことが最も重要なことだと考えています。
愛歯科医院では以下のような内容にこだわり、実践しています。
ラバーダムの使用
根管治療に際して、ラバーダム防湿という処置を行います。
ラバーダム防湿とは、薄いゴムシートを用いて治療対象の歯を包んで、他の歯や歯ぐき、舌、唾液などから隔離し仮想的なバリアを作り出すことをいいます。
ラバーダム防湿によって、得られる利点はいくつかあります。根管治療においては、治療中の歯の乾燥状態をキープできること、無菌的で清潔な環境を作り出せること、治療に用いる薬剤がお口やのどに流れ出るのを防ぐことなどがあげられます。
マイクロスコープの利用
歯科治療・手術用顕微鏡(マイクロスコープ)を根管治療において活用することは、治療成績の向上のために必須のものであると私たちは考えています。
根管治療は歯の内部に対して行う治療です。歯の内部は、肉眼では判別不可能なほど複雑で細かい構造をしています。また、その微細構造が炎症の原因になったりすることもあるので、微細な構造を的確に診て、処置を行う必要があります。
歯科用CTによる診断
歯の内部は、非常に細かく、複雑な構造をしています。また、その様相は千差万別であり、一つとして同じ形はありません。通常用いられるX線写真(レントゲン)だけでその全貌を把握することはできません。
CTによる画像診断は、根管治療において非常に有益なツールです。歯の内部の詳細な観察や問題箇所の特定、治療の精度向上、治療計画の最適化など、様々な利点があります。これにより、より高品質で成功率の高い根管治療を実施することができます。
成績向上に寄与するMTAを活用
MTAとはMineral Trioxide Aggregateの略で、バイオセラミックスとも呼ばれます。MTAは、生体適合性と生理活性に優れ、安全で副作用が少ない材料です。根管治療の最終段階である根管充填において、MTAを利用することで、良好な成績と長期的な安定性を期待することができます。MTAは密封性、殺菌性に優れ、新世代の根管充填材料として期待されています。
根管治療が必要な歯とは?
以下のような場合に根管治療を検討します。
むし歯が歯髄にまで
達している場合
むし歯が進行して、歯髄(いわゆる神経)に到達している場合で、強い痛みがある場合に根管治療が必要になります。
歯髄に達するような深いむし歯でも、症状がないなど、条件によっては歯髄温存療法を行うことによって、根管治療を行わずに歯髄を助けることができる場合もあります。
歯髄が壊死している場合
むし歯の痛みを我慢していると、ある時、痛みが嘘のようにひくことがあります。これは治ったのではなく、歯髄が壊死している状態になっています。この状態で放置していると、炎症反応が歯の外側、歯ぐきや歯を支える骨の中に広がっていき、大きく腫れたり、痛みが生じます。根管治療は不可欠となります。
過去に根管治療が行われていて、
根の先に膿を持っている場合
過去に根管治療が行われた歯(失活歯)で、歯の根の先に炎症が起きて膿がたまる場合があります。症状がない場合も多くありますが、晴や痛みが生じることもあります。また、痛みがなくても歯茎にニキビのような膿の出口ができることもあります。
根管治療が必要かどうかは、ケースバイケースです。
歯にヒビが入り、歯髄に到達している場合
一度もむし歯になったことがない歯であっても、歯にヒビが入り、そのヒビの深さが歯髄にまで達している場合があります。冷たい物がしみる程度の症状から始まり、時間とともに強い痛みとして現れることがあります。根管治療を行って歯を残すことをもくろみますが、歯の根にまでヒビが達している場合(歯根破折)は、やむなく抜歯せざるを得ないこともあります。
怪我で歯が折れ、歯髄が露出・感染した場合
前歯で生じることが多いのですが、怪我をして歯が折れた場合で、歯髄が露出・感染してしまうことがあります。このような時は根管治療が必要になります。怪我をしてから受診するまでの時間や、歯の状態によっては歯髄温存療法が可能なこともあります。怪我をされたらできるだけ早く受診してください。
従来の根管治療と
精密根管治療の違いは?
根管治療は、歯科治療の中でも難易度が高い部類に入ります。治療成績の向上のために、細かな配慮と実直な努力が必要となります。近年、一本の歯でも大切にしたいとの願いから、精密根管治療を選ばれる方が増えています。
従来の根管治療 (保険治療) |
愛歯科医院の精密根管治療 | |
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制限 | 保険診療のルール | 制限なし |
概要 |
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|
治療時間 |
30分/回
|
60~90分/回
|
根管充填 | 従来法 |
バイオセラミックスやMTAを使う
|
※ファイルとは、根管の中に挿入される治療器具のことをさします
精密根管治療の診療ステップ
愛歯科医院の精密根管治療では、次のようなステップで治療を進めています。
(注)個別の歯の状況に応じて、治療の進行過程は若干異なることがあります。
STEP.1診察・検査・診断
触診、視診、マイクロスコープ診査、X線写真(レントゲン写真)などを適切な検査機器を使って行うことで、診察・検査・診断を実施します。診断に従い、治療計画が立案されます。
STEP.2前準備
必要に応じて麻酔(局所麻酔)を行います。
その後、ラバーダム防湿を行います。
STEP.3むし歯や古い詰め物の除去
精密根管治療の初期段階として、むし歯、古い詰め物やかぶせ物を除去していきます。
残すべき歯以外のものがすべて取り除かれてから、いよいよ根管そのものの治療に進みます。
STEP.4根管形成・根管洗浄
歯の根管というのは、その直径が平均0.3mm程度であり(時にはさらに細いこともあります)、そのままの形では下に記す根管充填が行えません。そのため、根管充填ができるような形に整える必要があります。このステップを根管形成といいます。根管形成を行うことで、汚染物質や感染源となった細菌を取り除くことが達成されます。
さらに、超音波機器と薬剤を用いて洗浄・消毒・除菌を行います。これを根管洗浄といいます。
STEP.5根管充填
根管形成と根管洗浄が終わると、根管充填を行います。根管が空洞のままになると再び炎症が生じるためです。
愛歯科医院の精密根管治療では、根管充填において、MTA製剤、バイオセラミックス製剤を用いて治療成績の向上をはかっています。
STEP.6修復
根管充填の後は、修復のステップに進みます。
精密根管治療の費用
項目 | 料金(税込) |
---|---|
前処置 | 11,000~22,000円 |
前歯 | 44,000~66,000円 |
小臼歯 | 55,000~77,000円 |
大臼歯 | 88,000~110,000円 |
穿孔封鎖 | 11,000円 |
破折器具除去 | 11,000円 |
歯根端切除術 | 55,000~110,000円 |
精密根管治療の注意事項
- 健康保険は適用されません。
- 治療の結果を全てお約束できるものではありません。
- 修復方針は専門医が慎重に決定しますので、患者さんのご希望通りにならないこともあります。
- 当院では、「ドックベストセメント(Doc’s Best Cement)」の治療は行っておりませんのでご了承ください。
精密根管治療の治療例
精密根管治療の
よくあるご質問
治療後に痛みは生じますか?
高い確率ではありませんが、治療後に痛みが生じることはあります。多くの場合、しばらくするとおさまってきます。痛みが強かったり、なかなかひかない場合はご連絡ください。
治療にはどれくらいの回数がかかりますか?
その歯の状況によって必要な治療回数が変わります。例えば、ポストコアとクラウンが入っている歯ではそれを除去するための時間が必要です。また前歯はより少ない回数が、奥歯はより多い回数が、通常は必要となります。
精密根管治療が受けられない場合はありますか?
歯の根が割れている場合(垂直性歯根破折、Vertical Root Fracture)は、精密根管治療が行えません。その場合多くは保存不可能という診断になり、抜歯を検討することになります。根が割れているかどうかは、治療開始前に診断できないことも多くあります。
精密根管治療でも治らない場合はありますか?あるとしたらそれはどうしてですか?
根管治療の基本は、根管の中から細菌や汚染物質を取り除いて、炎症がおさまるように導いていくことです。しかしながら、根管の外、つまり歯根の外側にまで感染が及んでしまっている場合、治りづらいケースとなります。
精密根管治療を受けても治らなかった場合で、歯を抜かずに残す方法はありますか?
精密根管治療とはいえ、治癒率は100%ではありません。上に記したように、歯根の外側に細菌感染が及んでしまっている場合など、治らないこともあると想定しておくべきでしょう。 ではそのような時に、次に取り得る手段としては、「歯根端切除術」もしくは「意図的再植術」を検討することになります。このうち多く行われるのは歯根端切除術であり、意図的再植術は文字通り一か八かの最終手段です。どちらにしても、歯によって施術可能かどうかが変わります。
京都市中京区 愛歯科医院 院長 金明善