歯髄温存療法

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歯髄温存療法とは―できるだけ神経を守る治療

歯髄温存療法とは歯髄温存療法(Vital Pulp Therapy)とは、従来であれば抜髄(俗に言う「神経を抜く」)となるようなケースで、歯髄(いわゆる「歯の神経」)を積極的に残していく治療法のことをいいます。
かつては成功率が低いためにあまり採用されてこなかった治療法です。
近年(2010年代以降)になって、マイクロスコープとMTA(Mineral Trioxide Aggregate)の活用によって成功率が高まりました。

「神経を抜く」ってどういうこと?

歯の治療を受けるときに、「この歯はむし歯が深いから神経を抜く必要があるね」と聞いたことはありますか?「痛みもないのになぜ?」という疑問を持つ方もいらっしゃるようです。
歯髄とは歯の内部にある組織で、血管が通っていて歯に栄養分が供給されています。
また痛みを感じる神経線維も通っていて、痛みを感じる部分となっています。
むし歯が深くなって歯の神経(歯髄)に到達している場合に、その歯の神経組織(歯髄)を取り除き、代わりのお薬を詰める治療のことを、神経を抜く治療(抜髄)、あるいは根管治療といいます。

「神経を抜く」とどうなってしまうの?

神経を抜くとどうなってしまうの歯を失うことを望む人はいないと考えます。しかしながら、どうしても歯を抜くしかないという状況は残念ながらあります。
歯を失う原因にはいくつかありますが、多くはむし歯や歯周病が進行してしまい、さらなる治療ができなくなったことが原因になっています。
それ以外に多いのが、歯が割れること(破折)です。
ある調査では、長期メインテナンス中に抜歯に至る原因として、歯根破折(=歯の根にヒビが入ること、あるいは完全に割れてしまうこと)が第一位であったことが報告されています。

Axelsson P, Nystrom B, Linfhe J
The long-term effect of a plaque control program on tooth mortality, caries and periodontal disease in adults. Results after 30 years of maintenance.
J Clin Periodontol, 2004; 31(9): 749-757

抜髄(神経を抜く)を行うと、歯の内部に血が通わなくなり、もろくなってしまいます。
また、無意識のうちに強く噛みすぎてしまうことが生じるとされています。
そのため、神経を抜いた歯はそうでない歯と比べて割れやすくなってしまいます。
どれくらい割れやすくなるかと言えば、前歯で1.8倍、奥歯で7.4倍だったという調査結果があります。

Caplan DJ, Cai J, Yin G, White BA
Root canal filled versus non-root canal filled teeth : a retrospective comparison of survival times.
J Public Health Dent 2005; 65(2): 90-96

「できるだけ神経を残したい―あなたの願い、私たちの願い」

以上のことから、私たち愛歯科医院では、可能であれば「神経を残したい」と考えています。
そのために、定期メンテナンスや早期治療をおすすめするのです。
できるだけ歯を長持ちさせたい、これは誰しもが願うことですから。
マイクロスコープとMTAの活用により、歯の神経を残したいというその願いは、以前と比べて実現できるようになってきました。
ある調査によれば、MTAセメントを用いて行われた歯髄温存療法の成功率は97%とされています。

Bogen G, Kim JS, Bakland LK
Direct pulp capping with mineral trioxide aggregate: an observational study.
J Am Dent Assoc. 2008 ; 139; 305-315

2023年現在、愛歯科医院でも同程度の治療結果となっています。
専門用語では「神経の治療」のことを「歯内療法」や「根管治療」といいます。
その分野の専門書をひもとくと、必ずつぎのような言葉が書かれています。
曰く、「歯髄こそ最良の根管充填材である」と。
もちろん、強い痛みがあったり、根管治療が必要な場合はためらわずに実施することが大事です。

歯髄温存療法が
可能なケースと、不可能なケース

どのような時に歯髄温存療法が可能なのか、逆に、どのような時には不可能なのでしょうか。

歯髄温存療法が可能なケース

まず第一に、神経が生きている必要があります。専門用語では「生活歯である」といいます。
守るべき歯髄がすでに存在していない場合は、歯髄温存療法を行うことは不可能です。
このWEBサイトをご覧になった方が、歯髄温存療法を望まれて来院されることは多くありますが、すでに歯髄が失活していて(俗に言う”神経が死んでいて”)、実施が不可能なことも珍しくありません。

歯髄温存療法が不可能なケース

「たとえ成功しなくてもいいから、神経を残す治療を試みてほしい」ということは、実際の診療の場面でよく伺います。
しかしながら、ご希望に添えない場合もあります。次のようなときです。

失活している場合

失活というのは、歯の神経がすでに力尽きてしまっている状態とお考えください。
俗に言う「神経が死んでいる」状態です。
守るべき歯の神経がすでになくなっていますので、歯髄温存療法の対象にはなりません。

強い痛みがある場合

「昨夜は眠れないくらい痛かった」「いちど痛み出すと30分ほどジンジンしている」といったような強い痛みがある場合には、多くの場合、歯髄の再生力はなくなっており、歯髄温存療法の対象にはなりません。

出血が止まらない場合

ここでいう出血というのは治療が始まった後、治療中のことになります。
むし歯を取り切って歯髄が露出した場合、たいてい若干の出血があります。
多くは数分で自然に止まりますが、まれに止まらないときがあります。
出血が止まらないことは、歯髄の再生力が落ちている指標ですので、成功が望めません。

以上のような場合には、根管治療(歯内療法)を実施することになります。

精密根管治療について
詳しくはこちら

歯髄温存療法の診療ステップ

STEP.1検査・診断

顕微鏡(マイクロスコープ)での観察、X線写真(レントゲン写真)、EPT(電気歯髄検査)など、必要な検査を行います。
検査結果にもとづいて、治療の計画を立てます。

STEP.2前準備

歯石除去むし歯治療を始める事前準備として、歯石や歯垢(プラーク)を取り除いておきます。
麻酔(局所麻酔)を行い、ラバーダムを設置します。
ラバーダムを設置することで、治療中に用いる水や薬品がのどに流れ込むことを防ぎます。同時に、唾液中の細菌(口腔常在菌)が患部に入ることを防ぎます。
また、患部を乾燥させることができるので、治療で使う接着剤や樹脂材料が本来の性能を発揮できるようになります。

STEP.3むし歯の除去

マイクロスコープで注意深く歯の状態を観察しながら、むし歯を除去していきます。
この段階が、いわゆる「歯を削る」というステップになります。
やみくもに歯を削るのではなく、患部を適切に取り除くものですのでご安心ください。

STEP.4直接覆髄・コーティング

むし歯の除去が完了した後、MTAセメントを用いて歯髄(歯の神経)を保護します。
次に、歯と接着する樹脂材料で露出した象牙質をコーティングします。
ここまで進むと、むし歯の「治療」と歯髄の保護というステップが終わることになり、次の「修復」のステップに進みます。

STEP.5修復

「治療」の次は、歯の形と機能を回復する「修復」のステップに入ります。
むし歯の広がりやかみ合わせの状態などを勘案し、最適な修復方法をご提案します。
具体的には次のような方法があります。

・歯を部分的に修復するダイレクトボンディングやインレー、アンレー
・クラウン(かぶせ)

歯髄温存療法の費用

項目 料金(税込)
歯髄温存療法 33,000円

お支払い方法について
詳しくはこちら

歯髄温存療法の注意事項

健康保険適用外の診療になります。
治療成績を100%保証することはできません。
どのような修復になるのかは、医学的判断によって決められます。ご希望のみによって決めることはありません。
当院では、いわゆる「ドックベストセメント(Doc’s Best Cement)」による治療は行っておりません。

歯髄温存療法の治療例

歯髄温存療法の症例はこちら

歯髄温存療法の
よくあるご質問

「神経」を抜くとどんな影響がありますか?

「神経」を抜いた歯は「無髄歯」、もしくは「死んだ歯」と呼ばれることもあります。
神経がないために以下のような問題が生じることがあります。

  • 歯が変色しやすくなる
  • 歯が割れやすくなる
  • むし歯が再発しても自覚することが難しい

新陳代謝ができなくなることで、代謝できなくなったたんぱく質などの老廃物が変色して歯が黒っぽくなります。
また、歯に栄養が届かなくなることで、歯の脆弱性が増してしまい、些細な衝撃で欠損するリスクがあります。
さらに、被せものや詰め物の中でむし歯が再発しても、神経がないために痛みなどの異常に気付かず、大きくむし歯が進行してから発見されることもあります。

歯髄温存治療の成功率はどれくらいですか?

ある調査によると、97%の成功率とされています。他の論文でもおよそ90〜95%と報告されています。
ただし、患者さんの年齢によって成功率への影響があるとされています。
愛歯科医院では、これまで経過を確認できるケースにおいて、およそ95%の成功率です。

他院で神経を抜くしかないと診断されましたが、できるだけ大切な神経を残したいため、残す方向にはできないでしょうか?

MTAセメントを用いた歯髄温存療法は、全国どこの歯科医院でも行われている治療ではありません。
あえてやらないと決めている先生もいらっしゃいます。
セカンドオピニオンをご希望される場合は承りますので、いちどご連絡ください。
なお、歯髄温存療法が適用できるかどうかについては、診察と検査の上で診断いたします

歯の「神経」は抜くのか、抜かないのか、どちらが良いでしょうか?

できれば抜かない方が良いでしょう。「神経」によって痛みを感じるため、私たちは異常に気付くことができます。また、歯に栄養を届けることで、歯の強度や自然な歯の色を保っております。
何よりも長期的な時間の中で見た場合、歯の寿命が短くなることが明らかになっています。
「神経」を守ることで、歯の寿命をできるだけ延ばしたい、これが私たち愛歯科医院の目標です。

歯髄温存療法と根管治療の違いについて教えてください。

いずれの方法も歯の「神経」に対して行われる治療ですが、最大の違いは、歯髄温存療法は「神経」を残すものである一方で、根管治療は「神経」を抜くものという点だと言えます。
できるだけ歯髄温存療法を優先的に選択すべきですが、むし歯の進行具合によっては、やむを得ず根管治療を選ぶケースもあります。

京都市中京区 愛歯科医院 院長 金明善

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